LIFE SPAN 老いなき世界 デヴィッド A シンクレア
2人の心理学者が「善きサマリア人」の例えを検証してみることにした。
ご存知の通り これは聖書の中でイエスが語る 例え話である。追い剥ぎ に襲われて傷を負わされた人が道で苦しんでいた時、 聖職者たちは見て見ぬふりをしたのに対し、 異邦人 である サマリア人だけが助けてやったというものだ。
心理学者たちは若い役者を一人だと雇い、 神学校の中で苦しむ 演技をさせることにする。
心理学者たちはまた別館でスピーチをしてもらうという名目で40人の神学生を募った。学生たちはまずキャンパス内のとある建物に向かうように告げられる。
そこでアンケート調査に答えた後 一人一人が次の3つのうち1つの指示を受ける。
1つ目は まだ時間が十分にあるので慌てず 別館に向かえばいいというもの。
2つ目は今すぐ出れば ちょうど間に合うというもの。
そして3つ目は 遅れそうなので急いだ方がいいというもの。
急ぐ 度合いの大きいグループでは立ち止まって病人を助けたのが10%しかいなかった。
一方 急ぐ 度合いの小さいグループの方は60% あまりが足を止めて 救いの手を差し伸べた。
つまりこの実験で違いを生んだ要因は、 個人の道徳心でもなければ 、宗教に関する 学識でもない。 急がなくてはいけないと感じているか否かだけだったのだ。 P 411